2014年5月15日木曜日

MotoGP:重心の高低とバイクの運動性能

http://www.motogp.com/ja/photos/2014/Marc+Marquez+Repsol+Honda+Team+Jerez+Test+1

http://www.motogp.com/ja/photos/2014/Jorge+Lorenzo+Movistar+Yamaha+MotoGP+SPA+FP2+2

80年代のレーサーレプリカのシート高は低かった。
シート高だけでなく、バイクの重心自身も
現在のスーパースポーツよりもかなり低かった。

原因として、多くの人が挙げているのが
タイヤの違いである。

当時のタイヤはまだバイアスで
バイクのラジアルタイヤなんて夢物語に過ぎない、
とまで言われていたころ。

増大しつつあるエンジン出力を受け止めるには
とにかく安定性を最優先する必要があり、
それゆえの低重心設計であった。

しかし、ラジアルタイヤが一般化し
タイヤのグリップが急速に高まった現在では、
あえて不安定方向に振った方が有利、と言われる。

ただし、ただ単に重心を高めただけでは、
ロール軸と地面の角度が大きくなり、
前輪の動きが緩慢になるが、
現代のバイクは同時に重心を前方に移動させ、
前輪荷重を高めているので、
ロール軸と地面の角度は、大きくは変わっていない。

http://os-nightsky.blogspot.jp/2014/05/motogp.html

一応解説しておくと、バイクのロール軸とは、
後輪の接地面とバイクの動的重心を結ぶ線で、
バイクはこの軸を中心に転回しつつリーンする。

誤解を恐れずにいうと、
バイクのコーナリング時には
このロール軸を中心に転回するので
ライダーの実感としては
あたかも前輪が外側に振り出されていくように、
もしくは前輪が遅れて内向するように感じる。

実際、コーナリング時の前後輪の軌跡を見ると
前輪は後輪よりもアウト側を回っている。
(教習所でもやった内輪差というものだ。)

ロール軸が立ちすぎているバイクは
この内輪差が大きくなる傾向にあり
それだけクイックな動きが妨げられてしまう。

こういう設計思想で作られた現代のスポーツバイクの
重心は高く前方に移動したものになる。
これに最も有利なエンジン配置は
ヤマハのような並列四気筒である。

こういうバイクは前輪荷重が高く
最近のライテク本で「初期旋回は前輪で」とか
「前輪主体のコーナリング」などと書かれているのは
その特徴を踏まえたものである。

また各社のスーパースポーツが
少ない例外を除いて、みな押しなべて並列四気筒であるのも
このエンジン形式が一番車体設計が容易であるため、
というのも原因の一つといえる。

一方、ドゥカティのようなL型二気筒エンジンは
その正反対であり、重心を前に持っていくことが困難。

ちなみに、ロール軸に関与するのは、
バイクが停止しているときの静的重心ではなく
バイクが動いているときの動的重心である。

つまり、静的な重心が後ろにあるドゥカティは
強いブレーキングにより動的重心を前方に移動させないと
ターンインが緩慢になってしまう恐れがあるわけだ。

しかし一方で、重心が後ろ寄りのドゥカティは
ブレーキングスタビリティを確保しにくい構造でもある。

市販車のドゥカティであれば、
緩慢になりがちなターンインを
二気筒のスリムな車体が補っているが、
四気筒にも関わらずL型エンジンを採用している
デスモセディッチはこの点で明らかに不利。

ドゥカティとヤマハ両者の中間にあるのが
ホンダのV型エンジンである。

V型エンジンは、並列四気筒よりも
エンジン幅が小さく、
全体としてコンパクトになる。
これによりバイクを小さく作ることが可能になるため、
ホンダ、そして撤退前のスズキが
V型四気筒でMotoGPを戦っていた。

近年、ホンダMotoGPマシンのエンジンは
Vバンク角を当初の75.5度から90度へと増やしている。

90度としたのは、クロスプレーンと同じで
慣性トルクを打ち消す効果があるけれども、
Vバンク角を増やすことで、コンパクトさが犠牲になるし、
重心も下がる。また、前輪荷重を稼ぐ点でも不利となる。
したがって、ハンドリング的には明らかに不利となるはず。

このことについてはいろいろな憶測を呼んだ。

重心を下げたのは、ホンダが再び安定性重視に
設計方針の舵を切ったことを意味していないか。

RC213Vは200馬力を大きく上回るパワーを誇るが
1,2,3速ではタイヤがこのパワーを受け止められず
大きくパワーを絞ったマップにせざるを得なかったという。

このことは、主に低速コーナーの立ち上がりにおいて
現代のバイクといえど、本質的には80年代と変わっていない、
ということを意味することにならないか。

このため、バイクの重心を80年代のように
低く、かつ後ろに移動させ、立ち上がり時の
安定性重視のマシンとすることで、
立ち上がり加速に優れたマシンにしたのではないか。

低下する前輪荷重はライダーに補ってもらう。

当初、Moto2時代のように後ろ乗りしていたマルケスが
すぐに前乗りに改めたのも、それが理由と思われる。

しかも、後輪が浮くのをものともせずに
非常に強いブレーキングを見せるマルケスであれば
前輪荷重の低下分など、全く問題にならない。

一方、ヤマハのロレンソは
非常にオーソドックスな運転を好むし
ヤマハのマシンもそのように作られている。

高い重心による前後動を活用して
高いコーナリング速度を実現し
大きなRでスムーズにコーナーを抜けていくのは
ヤマハの方が優れている。

マルケスとホンダがこのまま勝ち続けると
あるいは、ヤマハ流の高重心設計から、
低重心方向に揺り戻しがあるかもしれない。


・・・・と、いう風に、体が大きくないオイラは考えてみた(^^;)

2 件のコメント:

チビ太 さんのコメント...

チビ太です

いつも楽しく拝見させて頂いております

私も今となってはかなり小柄
でも、バイクのシートは高ければ高いほど偉い

なーんて感覚をずっと持ってました

CB1100を購入して
たまには社外のシートでもつけようかと

そんなんで実測4cmアップのシートを付けたところ
最初はバイクがクイックに動いて

おぉ!

と思ってましたが、
半年くらい使ってみると

ロール軸に対して想定した着座位置の重心から
多分、遠くに着座した際の重心が気になりました

バンクさせた時になにかこう、自分がいつも重心の外側にいて
振り出される感じ

そして、バイクに振り回されないように
自分の体をシンクロさせるといいますか
先読みして動かすみたいな..

2cmアップのノーマル改のシートを改めて付けたところ
バイクのロールを妨げないようにただ力を抜いて
バイクに体を委ねる

かなり印象が違いました

私、貴殿のように文才がないのでアレなのですが
シート高ひとつとってみても
ただ、高くしてもいろいろ影響があるのだなと

そんな風に思いました

ではでは

mos さんのコメント...

チビ太様

コメントありがとうございます。
ライダーが強く前傾するSSの場合と、
直立姿勢になるCB1100の場合、
シート高さの考え方も別になると思います。

バイクが想定する範囲を超えて、シート位置を高くし過ぎると
回転中心から離れすぎることで
おっしゃるように、のんびり走ることができなくなりますね。

ホンダは、そういうことも考えて
CB1100のシート位置を決めているようにも思います。