http://www.asphaltandrubber.com/bikes/leaked-details-harley-davidson-livewire/#more-65578
アメリカン、世界的にはクルーザーという。
以前、スズキがアメリカの販売部門から
「スズキもアメリカンバイクを作るべきだ」
という突き上げを受け、アメリカンを作ろうとしたが
アメリカンバイクとはいったい何なのか、
社内で分かっている人間は一人もいなかった、という。
そこで、開発陣がアメリカに飛び、
販売部門のアメリカ人と議論したが
「Harley is Harley・・・・・・・・」
などと、禅問答のような答えが返ってくるばかりで
さっぱりわからない。
これは、スズキの技術者であった横井氏の回顧録
にあった話だが、実際、この手のバイクが
何を目的に開発されているのか、
きちんと説明できる人間は少ないだろう。
レースのホモロゲモデルでもあるスーパースポーツならば
サーキットのラップタイム短縮が最優先。
そのために高い運動性と、ハイパワーエンジンが必要。
ツーリングモデルであれば、
トルクのあるエンジンと、安定性のある車体。
ライダーを疲れさせないカウルなどの装備が不可欠。
ネイキッドは、全てをそれなりにこなす
いわばベーシックモデル。
トレール車は、オフロード走行のために
軽量な車体と、ストロークの長いサスペンション
・・・・などと、すらすらと出てくるだろう。
だが、アメリカンは?
「ゆっくりと走るためのバイク」
などと言って誤魔化している人間が多いが
インディアンが存在したころのハーレーは
インディアンとの差別化のため、
むしろスポーツイメージで売っていた。
たとえば、1947年まで発売されていたナックルヘッドは、
最新鋭のOHVエンジンにより最高速度160km/hを誇り、
大戦帰りの兵士たちの心を掴んで、爆発的に売れた。
今では、見た目だけと思われている「チョッパー」も
軽量化のために走りに不要な部品を取り外す
というカスタムが元になって生まれている。
スポーツスターファミリーも、
英国の高性能バイクに対抗するため、
軽量化スポーツモデルが必要になったために生まれた。
ハーレーが、今のような「ゆっくり走る」バイク
になったのは、インディアンが倒産して
事実上アメリカ唯一のメーカーになり、
かつ日本や欧州、特に日本から高性能バイクが流入し
ドラッグレース以外からはほぼ駆逐され、
「スポーツ」では売れなくなって以来である。
また、最近命名権を買収して復活したインディアンと
その母体となるヴィクトリーは
スポーツイメージでハーレーとの差別化を図ろうとしており、
まさに、いつか来た道、である。
では、いつの時代も変わらぬ「アメリカンバイク」
の神髄とは、いったい何なのか?
答えを求め、アメリカ中を走りまわったスズキの開発陣が
ようやくたどり着いた答えは、こうだった。
アメリカンバイクに乗る男たちは
女の子をナンパするために
海辺や湖畔の通りを力強く走りたいのだ。
そのためには何が必要かといえば、
バイクは女性が横たわっている姿をほうふつとさせる
セクシーなフォルムでなければならず、
ライディングポジションは男性の力強さを見せつけるもの。
エンジンは、道端の人にも力強さを感じさせるために、
低回転からトルクにあふれた振動と音で威圧する。
こういう形式美の世界に
「カフェレーサーのほうがカッコ良い!」などとほざいて、
前傾姿勢でエンジンをぶん回して走っていては
全てがぶち壊しである。
だいたい、カフェレーサーでは、
ナンパした女の子を後ろに乗せて
見せびらかしながら走れないではないか。
動物の世界ではオスが着飾ったり、
声を出したりしてメスをひきつける。
たとえば、クジャクの美しい尾の飾りは
オスだけのものであり、メスにはない。
なぜ、メスではなくオスなのかというと
着飾ったり、声を出したりして目立ってしまえば
メスだけでなく、天敵にも見つかってしまうからだ。
子孫を残すためには、卵を産んだり
子供を産むメスは貴重である。
一方、オスの方は、最悪、群れの中に
1匹残っていれば事足りる。
こうして、昆虫や動物は
みな、オスが天敵を呼ぶ危険を冒してでも
派手に着飾ったり、音を鳴らしたり、
匂いを発したりして目立つ役割を引き受けることになった。
つまり、アメリカンバイクとは
クジャクの尾の飾りに相当するものであり、
オスの本能を満たすための「飾り」である。
クジャクの尾の飾りに
機能や実用性を求める者などいない。
だから、長く寝そべったフロントフォークとか
むやみに重い車重とか、
高回転まで回らないエンジンとか
どんなに「速く走るのに不利」と言われようと、
クジャクの尾に必要であれば
それを欠くことはできないのである。
それを反映してかどうか、アメリカンの別名「クルーザー」には
俗に「街中で女(男)あさりをする人間」という意味がある。
何も一定速度で長距離走る船などと同じように
ツーリングに適しているバイクという意味ではなかったのだ。
そういう、ある種の「美学」の上に成り立っているのが
アメリカンバイクであり、そこを理解しないと、
ただのダメバイクになってしまう。
スポーツスターが本場アメリカで「女子供のハーレー」
などと言われて、軽んじられているのも、
「力強さを見せつける」という点では不利だからだ。
そのハーレーが6/19に電動バイクを発表する!
というので、ネットではちょっとした騒ぎになっていた。
ハーレーであるからには、あくまでも
ハーレーの美学を満たさないといけないのだが
力強いエンジンの代わりに、音も振動も発しない電気モーターでは
ハーレーの美学を満たすのは難しい。
ハーレーは、この難題にどのような回答をするのか?
と思っていたら、出てきたバイクは、事前のリーク情報通り
ごく普通のネイキッドタイプであった。
V2エンジンでないとアメリカンたり得ない
というのがハーレーの答えなのか?
オイラとしては、ハーレーが電動バイク作ると
こうなるのか!という作品を期待していたのだけれども・・・
2 件のコメント:
いつも興味深い記事をありがとうございます。
事後報告になりますが、当時、クルーザーの定義に関して実に腑に落ちましたので、機会があれば引用させていただきたいと考えており、ようやく実現しました。
問題があればおっしゃってください。
http://blogs.yahoo.co.jp/f4spr_c/36308276.html
vyrus_empire様
コメントおよびご連絡ありがとうございます。
特に問題ありませんので、ご自由に話題にしてやってください。
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