2014年8月7日木曜日

低回転・低速の時がエンジンオイルにキツイ理由

さし絵は以下から
  ↓
http://www.onallcylinders.com/2012/05/16/an-introduction-to-motor-oil-for-dirt-bikes-atvs-and-utvs/

エンジンオイルは、金属同士の隙間に入り込んで
油膜を作り、それによって摩耗を防いでいる。
(流体潤滑状態)

油膜が切れると、金属同士が直接接触し
摩擦や摩耗の増加を招く。(境界潤滑状態)

したがって、エンジン開発やオイル開発においては
いかに油膜が切れないようにすべきか、
が、重要なポイントの一つになっている。

油膜の厚さを求める式としては、
Dowson-Higginsonの式が比較的広く使われている。
この式は、使いやすいためによく使われるが
厳密な適用はあくまで線接触の場合に限られる。

とはいえ、油膜の性質について
定性的に知るにはこれでも充分であると言える。

この式から分かることは、
オイルの粘度が小さく、荷重が大きく、
エンジン回転数が低いほど、
油膜は薄く、切れやすくなる。

粘度と荷重は、特に説明しなくても
なんとなくわかってもらえるだろう。

低粘度すぎるオイルを使えば
エンジンにダメージを与えるし
高負荷(=高荷重)のサーキット走行では
オイルに気を使った方が良い、というのは
誰でも知っているからだ。

でも、回転数が低いとダメというのは
知らない人もいるのではないか。

分かりやすくイメージで話すと、
実は、金属面同士がゆっくりとしか動いてないと
外から金属の隙間にオイルが入り込んでこれない。
そのため、オイルの供給が切れて、
油膜が維持できなくなる。

したがって、低回転で運転しているとき、たとえば、
渋滞の中をノロノロ走っている時というのは
思っている以上にオイルにとっては悪条件である。

低速ノロノロで、油膜が薄くなっているのに
さらに風を受けないので、油温も上がりやすい。

サーキット走行が「 高負荷(=高荷重)+油温上昇 」
のダブルパンチだとすると
低回転での走行は「 低回転+油温上昇 」
のタブルパンチということになる。

しかも、さきほどあげたDowson-Higginsonの式によると
わずか12%回転を下げただけで、負荷を倍にしたのと
おなじだけ油膜に悪影響を及ぼす。

低回転での走行は、思っている以上にバカにできないのだ。

オイル開発をしている人によると
高速道路を走行するような運転モードで楽勝でも
渋滞時を再現するモードの時に
焼き付きなどが起こりやすい、という話を聞いた。

ハーレーの純正オイルが20W-50と
いまだにかなりの高粘度オイルなのも、
ハーレーの技術が低いからだとか、
空冷なのでクリアランスが広いせいだ
などと思っている人も多いかもしれないが
そういう理由だけではなく、
低回転を多用するハーレーというのは
油膜を保持するのには厳しいバイクだからである。

ハーレーのユーザーの中には、
アイドル回転をわざと下げて
「三拍子!」
なんて喜んでいる人も多いが
もし低粘度オイルでこんなことをしたら
あっという間に焼付いてしまうだろう。

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

最近、島根大学客員教授の久保田邦親博士の提示したCCSCモデルというものを深く考えるようになりました。そうすると「機械をなぜ小さくできない」のかという境界潤滑の奥深さが見えてきました。みなさんも以下のURL興味があればどうぞ。

http://www.hitachi-metals.co.jp/rad/pdf/2017/vol33_r03.pdf

mos さんのコメント...

コメントありがとうございます。

匿名 さんのコメント...

 EHL理論の専門家であれば、油膜は絶対に切れないというでしょうね。しかし境界潤滑状態というのもうすでに油膜は切れています。電気抵抗を計った実験が調べればたくさん出てきます。しかし問題は「油膜が切れる」と言いたくなるような突然死(サドンデス)が起こるのはなぜかということです。それに明確な答えを出したのが久保田博士のCCSCモデル。なんと潤滑油由来の表面に張り付いたグラファイト膜(トライボフィルム)がナノメートルのダイヤモンドになるというものです。詳しくは「境界潤滑現象の本性」で検索してみてください。byメタルケンイチ

匿名 さんのコメント...

 久保田氏はダイセルリサーチセンターの首席技師になっているようですね。さて偶然見つけた、 材料物理数学再武装も今流行りの人工知能の考え方を関数接合論で説明しているのはためになりました。ストライベック線図ってクーロンとペトロフの式を任意点で接合するのにシグモイド関数が便利なんですね~。

匿名 さんのコメント...

材料物理数学再武装は面白いですね。なんで破壊確率が、ワイブル分布風になるのかとか、建設、土木分野で言われる弾性-塑性座屈の話や、鉄鋼材料の熱処理ででてくるマルテンサイト変態やら金属の比熱の話、まあ私の場合ダイカスト関係なので鋳造工学のクボリノフの式の話が面白かった。