2012年4月28日土曜日

『モーターサイクルの設計と技術』


四輪でもそうだったけど、バイク雑誌・書籍の記事というのは
技術的にあいまいだったり、感覚的な表現が使われていることが多い。

書いている記者に専門知識がどこまであるか不明だし、
様々な読者を対象にしているから、
しかたないといえば仕方ないのだけれど、
モーターサイクルの動きについてきちんと理解しようとすると
別の本にあたったほうがよい。

かつて存在した山海堂の専門書をあたってみると、
『オートバイのサスペンション』(カヤバ工業・編)
『モータサイクル―初心者のための基礎と実際』
  (ヤマハ発動機モータサイクル編集委員会・編)
などが、この関係の本としてはあるが、
前者はサスペンションの本なので
バイクを総合的に理解するには難があること、
後者は、あまりに入門書すぎてほとんど役に立たないこと
それに山海堂が倒産しており、手に入りにくくなっていること
などから、必ずしもお勧めできない。

そこで、というわけではないが、この本である。
この本も、一応、それなりの数学的知識は必要だが
式の導出などはすっ飛ばしており、
最終結果の式だけが述べられている。

最終結果だけとはいえ、
バイクが走り、曲がり、止まる際に
どのような力がどのように働き、
またバイクの構造が、なぜそうなっているのか
それをきちんと理解するには充分である。
図も豊富なので、式の意味を理解する助けになる。

難を言えば、専門書ではないので
妙にゆったりと書かれており、
その結果として、1ページ当たりの情報が少ない。
そのため、オートバイの動きの全てを
記述できていないことだ。

たとえば、前輪のジオメトリに関する主なパラメータは
キャスター角、トレール、オフセットがあるが、
この本を読んでみると、トレールのみが本質で
キャスター角とオフセットは重要ではないかのように
思ってしまう人がいるかもしれない。(むろん、それは誤りだ)

そのように、必ずしも完璧ではないが、
理系ライダーであれば、一度手に取ってみることをお勧めする。
少なくとも、自分はこの本を読んで、最近になってようやっと、
バイクの運動について理解し始められるようになってきた。

四輪ではポール・フレールを読んでおけば
とりあえず知った風な顔をしていられたが、
バイクの場合は、そういう決定版という本はまだないようだ。

自動車技術会(日本の自動車の学会)でも
最近になって、ライダーの動きとハンドリングの関連について
ようやっと公的な調査がはじまった。
ライダーの動きがハンドリングに影響するバイクの場合
専門レベルでもまだまだ未解明のことは多いのだろう。

0 件のコメント: