2013年6月13日木曜日

チェーンへの注油

チェーンの正しい掃除と注油方法はわかりにくい。
人によって言うことが違う、などなど
我々一般ライダーにとって悩みの種である。

さて、そこでチェーンの専門家が
書いた文章を参考にしてみた。

元ネタは、日本トライボロジー学会の
学会誌に載っていた、以下の文献である。

「チェーンのトライボロジー」中川健朗,トライボロジスト 43,166-171(1998)

トライボロジー(tribology)というのは一般には
なじみがない言葉だが、日本語で「潤滑」を指すと思えば
大きな間違いではない。(正確には潤滑より少し広い意味らしい)

現に、「日本トライボロジー学会」の前身名は
「日本潤滑学会」と言っていた。

さて、チェーンの構造だが、
チェーンを上から見た時の断面図は
以下の図1のようになっている。



チェーンの命と言える部分は
ピンとブッシュ。
エンジンの馬力はここで受け止められ、
タイヤに伝達される。そのため、
ピン-ブッシュ間には非常に強い面圧がかかる。

それだけでなく、
チェーンがスプロケットにかかって曲げられるとき
ピンとブッシュが擦られて摩耗が生じる。

このようにピンとブッシュは
かなり過酷な状況に置かれており、
ピンとブッシュの隙間を
チェーンルブで満たして油膜を作り
両者が直接接触するのを防ぐのが
大事になってくる。

しかし、チェーンに注油したとしても、
そんなものは遠心力でどんどん飛散してしまい
あっという間にピンもブッシュもカラカラになってしまう。

これを防ぐために発明されたのがシールチェーン。
図2のように外プレートと内プレートの間に
Oリングを挟み、これによって中のチェーンルブが
外に流れ出てくるのを防ごうというのがコンセプトだ。


しかし、Oリングがダメになって、
中のルブが遠心力で飛散し始めるようになると
チェーンの寿命が一気に終わりに近づくことになる。

したがって、ユーザーがすべきことは
まず、Oリングをできるだけ長持ちさせること。
そのために必要なのがOリング外側への注油だ。

チェーンが動くと、Oリングと
内外プレートの間が擦れる。
Oリング内側は工場で充填したルブがあるが
外側がカラカラだと、この部分で擦れて
Oリングの寿命を縮めてしまう。

そこで、定期的にチェーンルブを
Oリングめがけてスプレーしてやる。

これはまた、チェーンの抵抗を減らし
エンジン馬力の伝達効率を向上させることにも繋がる。

一方、ブッシュや内プレートと
ローラーの間の潤滑は、
(もちろん必要ではあるが)
ピンとブッシュの潤滑に比べれば
さほどせっぱつまってはいない。


さて、以上のことから考えると
・注油はOリングに向けて行うのが最優先。
・掃除の際は、Oリングを傷つけないように注意。
・ローラー周辺の掃除と潤滑は、もちろん必要だが、
 重要度からいって、そこまで神経質になることはない。
ということになる。

ということで、大事なことなので繰り返すと

「チェーンルブの最優先の役割は
 Oリングが内外プレートとスムーズに擦れるように
 Oリングの外側をガビガビにしないこと。」

ということなので、チェーンメンテのときには留意しようと思う。

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