2016年9月8日木曜日

MotoGP(ついでにF1):そもそも「エンジンのホンダ」の神話は本当だったのか?



http://goo.gl/mPN7pj

昔から、二輪レースの世界では、
エンジンのホンダ、ハンドリングのヤマハ
と言われてきました。

ストレートでの最高速は
ヤマハに対して明らかにリードしていたし、
その上、1992年のGP500に登場した
ビックバンエンジンは、トラクションにも優れ
立ち上がり加速で他を圧倒しました。

しかし今年のMotoGPでは、
「エンジンのホンダ」
は完全に過去のもの。

最高出力だけでなく
立ち上がり加速もダメという
ダメダメな体たらく。

オイラはF1を見なくなって久しいですが
F1ホンダも、パワーで負ける状況が続き、
ファンを嘆かせているそうです。

どうしてこうなってしまったのか?
誰もが思うことですが、
話はそんなに難しくはありません。

そして、これは昨今の日本の問題そのまま
とも言えます。


どういうことかというと・・・
そもそもファンの間にある
「エンジンのホンダ」
なんて神話は本当だったのか?

戦後10年ちょっとそこらで
マン島で奇跡の優勝を果たし
さらには世界GPにも殴り込みをかけ
80年代にはF1でも伝説的な勝利を重ね
「ホンダエンジンは世界一!」
というのは、日本人にとっては
もはや常識を通り越して
空気のようなものになっている感があります。

しかし、世の中に奇跡なんてモノは
絶対にありません。必ずタネがあります。

まず、二輪レースの話から始めると
1958年に、メーカー間で協議の結果、
ジレラ、モト・グッツィ、モンディアルが
全て世界GPより撤退しています。

理由は、欧州でモーダルシフトが進み
二輪市場が縮小して、各メーカーとも
レースどころではなくなったため。

これ以降、二輪メーカーは
斜陽産業とみなされ、
カネもヒトも集まらなくなります。

例外的に残ったのはオーナーの個人的趣味で
参戦を続けるMVアグスタのみ。

ホンダが殴りこんだのは
こういう世界だったわけです。

太平洋戦争の序盤で
敵の戦力が揃っていない場所に
大戦力で押しかけて
「勝った、勝った!」
と浮かれていたことがありましたが
厳しい言い方をすると、
それと似ている部分があります。

そして、80年代のF1ですが、
ここにホンダが持ち込んだのは
エンジンテレメタリーシステム。

それまで、熟練者のカンと経験で
成り立っていたF1の世界に
客観的データを持ち込み、
それを解析することで
急速な性能アップにつなげる。

カンと経験V.S.客観的データ
どっちが勝つかなんて明白。
はっきり言って勝負にもなりません。

しかし、この動きが変わり始めたのは
90年代になってからです。

SBKで、ドゥカティが
(250ccの排気量ハンデをもらうなど、
 レギュレーションに助けられた面はありますが)
快進撃を続けることで
欧州人の二輪メーカーを見る目が変わり
次第にカネとヒトが集まり始めたこと。

さらに、テレメタリーシステムは
いまやホンダだけでなく
どこのメーカーも利用しています。

客観的データの活用というのは、
逆に言えば、「誰にでもできる」
ということを意味するわけで、
タネ明かしされてしまえば
追いつかれるのは時間の問題。

こうして、ホンダの活躍を支えた条件が
次第に無くなっていきました。

特にドゥカティがアウディに買収され
世界トップクラスのVWグループの一員になり
VWの研究成果とカネが使えるようになったのが
トドメをさした感があります。

「エンジンのホンダ」のイメージを守るため
MotoGPホンダのエンジンは
クラッチロー曰く「非常に乗りにくい」
モノになってしまい、それを避けるため
最高速度を落とした2016年のエンジンは
結局、全てダメなエンジンにしかならなかった。

四輪メーカーのVWは
二輪シャシの知識には疎いので、
ヤマハのようにハンドリングで勝負していれば
勝負できる部分はあるのですが
ホンダのウリは「エンジンのホンダ!」

このホンダの苦境は
今から50年以上前の
東京オリンピックにおける
「東洋の魔女」
無敵女子バレーチームにも重なります。

体格で負ける日本バレーは
回転レシーブや
Aクイック、Bクイックなど
技巧を凝らした作戦で相手を翻弄し、
無敵の名をほしいままにしました。

しかし、その技巧は
今ではどこの国でも
当たり前に使われるようになり
結局、体格の差がそのまま
戦力の差に逆戻り。

これを補うためには
さらなる技巧を生み出さないと
再び勝てるようになりませんが
そうそう手品のネタはありません。

東洋の魔女だけでなく、
日本経済も同じ。

品質管理と工場のロボット化で
世界の先端を走り
奇跡の戦後復興を成し遂げたものの
今では品質管理もロボット化も
当たり前のものになってしまい、
強みを失った日本経済。

なんか、いろいろとモロに重なりますね。(汗)

さて、2017年、MotoGPホンダは
「東洋の魔女」の運命と決別し、
誰もが乗りたがるマシンを
作ることが出来るでしょうか?

もはや、頑張るだけでは勝てない時代
はたして・・・・

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