2010年12月24日金曜日

ドカのSS



ずいぶん昔の歌だが、チャーの「気絶するほど悩ましい」では、
とんでもない悪女にも関らず、いや、悪女ゆえに
どうしようもなく 魅かれていく男のことが唄われている。

また、山川健一の「快楽のアルファロメオ」では、
 「たとえばゴッホのあの筆のタッチ、
ドフトエフスキーの小説の読みづらさは、
彼らが彼らであるための自己主張で あり
何物とも交換不可能な魅力であり、だが同時に 欠点でもある。」
と書かれている。

SSというのは、そういうバイクだろう。

男女関係でも、女性から「いい人」と言われたら、
実はおしまいである。
山川健一の言葉を借りれば、魅力、個性とは
ほとんど欠点と紙一重のところにある。

昔、CB400SF(初期型)に乗っていた頃のこと、
友人がDUCATIの400SSを購入したので
乗らせてもらったことがある。

はっきり言ってサイテーだった。 パワーは全くない。
CBなら軽々と1万回転以上まで 一気にシュンと回るのに、
ガタガタ振動するだけで、トルク特性もヘンテコ。
ハンドリングは妙なクセがあって、
慣れるまでは交差点曲がるのにも気が抜けない。
聞くと燃費も悪そうだ。

町工場のオヤジが作ったような パイプフレームに、
安っぽいシート。おまけにムチャな前傾姿勢。

けれど、その後CBに乗って帰る途中、妙な気分に襲われた。
 「なんだこれは?」

今、それを回顧してその「気分」とやらを解説してみると、
「このバイク、俺が居眠りしててもこのまま 何事も無く走っていきそうだな。」
と言えばいいのだろうか。

サイテー!なDUCATIは、いついかなる時も、
「お前はいま、バイクに乗ってるんだ。それを忘れるな!」
 と主張してきたし、うまく操れば、すさまじい勢いで向きを変えた。
その頃はアルファ・ロメオで道楽していたので
二輪まで道楽するわけにはいかない、とCB400に乗っていたけれど、
まあ結局、 落ち着くところに落ち着いたということか。

あの日の「サイテー!」なDUCATIの雰囲気を 今もSSは受け継いでいる。

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